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設立の背景

平成18年(2006年)に住宅建設計画法が廃止され、住生活基本法が制定されました。住生活基本法では良質な住宅の供給、良好な住環境の形成などの基本的な国の施策の方針を定め、目的が達成されるように国や自治体、住宅関連業者の責務が定められました。

住宅を長く維持して次の世代に引き継ぐことが目標として位置づけられ、そのために住宅を定期的にメンテナンスし、リフォームしていくための対策が講じられました。
それから15年が過ぎた令和3年(2021年)に至っても、住宅のメンテナンスやリフォーム市場は、目標とする成長は達成できていません。そこで国は住生活基本法に基づいて住生活基本計画を見直し、令和12年度(2031年3月まで)までの新しい住生活基本計画を閣議決定しました。

住宅の塗装工事は住宅の維持管理に欠かせない工事で、住生活基本法の制定以来、需要は拡大して市場規模も1.5倍くらいまで成長しています。それでも、住生活基本法が目指す目標からは遠く、消費者がもっと安心して利用できるよう、改善が求められます。

住宅リフォーム市場が成長し、住宅塗装市場も拡大すると、リフォーム工事や住宅塗装工事でのトラブルも増加しました。住宅塗装工事に標準となる基準がないため、品質が不十分な工事が発生したり、消費者の工事に対する知識不足や誤解がトラブルの原因となったりしました。消費者が安心して住宅の塗装工事を発注し、行うには多くの課題があります。

次の表(図1)は公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが公表している住宅トラブルの相談件数について作成した表です。

図1トラブルの相談数

トラブルの相談数のグラフ

公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住宅統計年報2021資料編から作成

リフォームの相談よりも新築の相談の方が多いものの、いずれも増加傾向にあることがわかります。2008年から2020年の12年間でリフォームの相談数はおよそ8倍程度まで大きく増えています。

次の2つグラフ(図2・図3)は、戸建て住宅のリフォームのトラブルの相談件数を部位別に集計したグラフと、事象別に集計したグラフです。部位では外壁や屋根など塗装工事に関連する部位での件数が多く、事象でも雨漏り、はがれ、ひび割れなどの塗装工事に関連するトラブルが上位を占めています。

築年数が経過した住宅では不具合事象の原因を内在していることも少なくありません。そうした問題をそのままにして、単に塗装だけを行うことで、後に不具合事象が顕在化することも少ないでしょう。

住宅を長期間維持活用するためにはメンテナンスが必要で、塗装工事はその中心的役割を果たします。住宅の塗装工事の需要が拡大するとともに塗装工事でのトラブルも増加しており、かつ、トラブルの増加傾向は塗装工事の増加よりもかなり大きく、塗装リフォーム工事市場での対策が必要です。

図22020年度の部位別リフォーム相談件数・戸建住宅

2020年度の部位別リフォーム相談件数・戸建住宅のグラフ

公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住宅統計年報2021資料編から作成

図32020年度の不具合別のリフォーム相談件数・戸建住宅

2020年度の不具合別のリフォーム相談件数・戸建住宅のグラフ

公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住宅統計年報2021資料編から作成

国はリフォーム市場の成長が停滞している大きな要因の一つとして、工事後のトラブルの増加と考えています。
住宅の塗装工事でトラブルが発生しやすい原因の一つが、工事の大半が現場での施工に依ることです。設備工事では工場で製造された設備機器を取り付ける工事が大半で、設備機器は工場生産で品質管理が十分です。

一方、塗装工事は材料である塗料は工場で品質管理が行われていますが、半製品であるため、最終的な品質は現場での工事によって決まります。ところが、住宅の塗装工事では、施工管理に十分なコストをかけることが困難で、品質管理が不十分な塗装工事がどうしても発生してしまいます。
工事を発注する消費者にとって、どんな品質のものが提供されるのか、終了した塗装工事は十分な品質があるのか、わからないことが多く、不安も少なくありません。

一方、塗装工事を受注する塗装工事業者にとっても、品質管理などをしっかり行って塗装工事を行っても、消費者にきちんと評価してもらうことが難しく価格に反映させられないという悩みもあります。
公共団体が行う公共工事では、品質管理の基準もしっかりしており、技術者がしっかりと関わることで、品質が確保された工事が行われます。一般の住宅塗装工事で公共工事と同じことを行うことはできませんが、住宅塗装工事の基準を明確にして、塗装工事業者が基準を遵守していくこと、工事発注者(消費者)が基準を理解して塗装工事を正しく評価することを目指し、住宅塗装工事での品質管理を低コストで確立することができると私たちは考えます。

一般財団法人塗装品質機構(PQA)ではこうした住宅塗装工事の課題を解決することを目的として設立されました。工事の発注者である消費者が難しいことを行わなくても、安心して良質の塗装工事を提供してもらうことができる。工事の受注者である塗装工事事業者も不要なコストの増加を抑えて、良い品質の塗装工事を届けることができる。消費者にとっても事業者にとってもメリットがある仕組みを提供することで、住宅塗装工事の品質が向上し、消費者の生活が豊かになり、塗装業界の発展に寄与することを目指しています。