データ検証する男性のイラスト

基本事項

標準仕様書では一般事項として工事に関わる人の役割を明確にしたり、ことばの認識や意味に食い違いが出ないように用語の定義をしたり、取り扱う書類などの内容を決めたりしています。

PQA塗装工事基準では工事を発注するお客様と工事を受注する塗装事業者の間で、共通認識を持っておくことで、トラブルを避けたり、工事の効率を良くしたりするため、役割の定義と工事関係書類を基本事項として定めています。

役割

  • 1工事発注者

    工事を発注する人、お客様のことです。施主様と呼ぶこともあります。
    工事発注者は工事に適した作業環境を提供し、隣家など近隣住民との交渉の責任を負う、完成した工事を確認し引き渡しを受けるなどの役割があります。

  • 2工事受注者

    工事発注者が発注する工事を請け負う人(会社)です。通常は工事を請け負う塗装事業者です。

  • 3工事管理者

    工事受注者は工事管理者を選任して、工事の管理にあたらせます。
    工事管理者は工事に必要な書類を作成し、契約通りに工事が完成するよう、工事担当者に適切な指示を行います。
    工事管理者は専任者に限定せず、見積書を作成して契約手続きを行った営業担当者が兼務すること、実際に作業を行う工事担当者が兼務することも想定しています。また、不要な工事コストを抑制する観点から、工事管理者は常駐とはしていません。
    工事管理者の選任について資格などの条件はありませんが、工事受注者が工事内容を考慮して、適切な知見、経験を有する者を指名するものとします。

  • 4工事担当者

    実際に塗装などの作業を行う職人です。工事仕様書や工事管理者の指示に従って作業を行います。

工事関係書類

工事関係書類の構成

工事関係書類の構成一覧
工事関係書類の構成図解
  • 1現場調査報告書(作成:必須/様式:任意/提出:必須)

    現場調査報告書は建物診断報告書などと呼ばれることもある、見積書を作成する際に建物の状況を確認して、工事の対象、工事の内容を決めるための基礎とする書類です。様式や名称は任意ですが、必ず作成して見積書と共にお客様に提出します。

  • 2見積書(作成:必須/様式:任意/提出:必須)

    具体的な工事の内容、仕様、数量、金額を示した、契約の基礎となる書類です。
    お客様が現場調査報告書と見積書を確認すれば、工事の対象、工事の内容、工事金額を具体的に確認できることが必要です。様式は任意ですが、必ず作成して現場調査報告書と共にお客様に提出します。
    ※例えば破風、軒天、雨樋などは個別に見積項目を設定して見積書に記載しますが、複数の部位の工事をまとめて「付帯部塗装工事 1式」と見積書に記載した場合は付帯部が建物のどの部位を指し、どのような工事を行うかを特定することができません。この場合は現場調査報告書に工事の対象となる部位を特定し、工事内容(使用材料や施工工程などの情報)を記載して、現場調査報告書を補完的な書類として対応します。

  • 3工事仕様書(作成:必須/様式:指定/提出:任意)

    見積書と現場調査報告書を基に工事の対象となる部位を特定し、部位ごとの施工内容、使用材料を記載した書類です。塗装工事は工事仕様書に基づいて行われますので、工事の内容を決める最も重要な書類です。塗装する建材の種類、劣化の状況によって下地の処理方法や使用する材料の選定など施工内容が変わります。施工内容の決定については第6章の部位・建材種類別の塗装工事基準を参照し、施工内容が適合しているかどうか確認をします。
    ※工事仕様書と工事工程進捗チェック表を作成するためのExcelファイルはPQAのホームページからダウンロードできます。

  • 4工事工程進捗チェック表(作成:必須/様式:指定/提出:任意)

    工事仕様書に記載された工事対象部位について工程ごとに写真を撮影して進捗を確認するためのチェック表です。(使用する材料の写真も撮影対象になります)
    塗装工事の品質管理において、予定された工事が予定通りに行われているかを確認することが最も重要です。工事写真は各工程が予定通りの内容で行われたことを証明するエビデンス(根拠)となります。
    ※工事仕様書と工事工程進捗チェック表を作成するためのExcelファイルはPQAのホームページからダウンロードできます。

  • 5工事アルバム(作成:必須/様式:任意/提出:任意)

    工事写真をデジタルデータとして保存し、個別の写真ごとに撮影日付、撮影箇所、撮影の対象となった工程が特定できるようにします。工事工程進捗チェック表に記載された撮影箇所(部位)と工程の組み合わせで、最低限必要な工事写真が決まります。
    工事写真は原則として撮影した日に整理して保存します。
    上記の条件を満たす、クラウド上の写真管理サービスやアプリケーションを利用して対応されることを推奨します。クラウド上のサービスを使用される場合は10年以上、安全に保存できるサービスを選択します。(建設業者の営業に関する図書の保存期間が10年と定められているため)
    ※株式会社アステックペイントの「現場ポケット」はPQA塗装工事基準に対応したサービスです。

  • 6工程表(作成:任意/様式:任意/提出:任意)

    工事の進捗管理を行うための表です。作成して工事担当者に情報を共有して、工期の遵守のため活用します。

  • 7工事完了報告書(作成:任意/様式:任意/提出:任意)

    工事アルバムに保存した工事写真を使用して、工事の施工状況がわかる記録として作成します。工事完了報告書は工事発注者に工事の進捗状況、出来映えなどをわかりやすく説明するための書類です。(公共工事建築改修工事標準仕様書でも、デジタル化された工事アルバムによる記録を主としており、工事完了報告書の作成は必須とはなっていません。)